-心臓弁膜症の新しい大動脈弁形成術-


心臓弁膜症の新しい大動脈弁形成術

心臓弁膜症の「弁置換術」と「弁形成術」

心臓弁膜症は主に、大動脈弁の病気と、左心房と左心室を隔てる僧帽弁の病気があります。血管の動脈硬化などが原因となり、高齢化などの影響で手術件数は年々増えています。

手術法の一つ、弁置換術で金属性の機械弁を入れると、血液の塊(血栓)ができないようにするワーファリンを一生飲む必要があります。出血しやすくなるので、けがをしないように運動を控えるなど、生活の制限が多くなります。一方、弁形成術は異物を入れないので、薬を飲む必要がありません。

僧帽弁は2枚の弁からなる単純構造なので弁形成術ができるが、3弁から成る大動脈弁の形成術は難しいです。しかし、東邦大医療センター大橋病院心臓血管外科教授の尾崎重之さんは、「自己心膜を使った大動脈弁形成術」により、手術を可能にしました。


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自己心膜を使った新しい大動脈弁形成術

まず、心臓を包む心膜の一部(縦7センチ、横8センチ)を切り取って特殊な溶液に10分ほど浸して強度を上げます。この心膜から3枚の弁を作り、動きが悪くなった大動脈弁を除去した後に、3枚の弁を縫いつけます。

2007年4月の初手術以来、2010年6月までに180例以上実施されました。一番怖いのは、手術後に血栓ができて脳梗塞を発病することですが、発病は有りませんでした。人工弁を入れた場合、手術1年後の脳梗塞発病率が2、3%なので、それより低いです。

関東在住の50代男性は2008年春、階段を上る時に息切れがするようになり、大動脈弁の病気と診断されました。肝硬変の持病があったため、出血しやすい症状がありました。

人工弁を入れてワーファリンを飲まなくてはならなくなると、これまで以上に出血しやすくなり、生活上の支障が大きくなります。そこで、尾崎さんは新しい大動脈弁形成術を提案しました。手術は約4時間で終わり、約2週間後に退院しました。男性は、息切れなどの症状がなくなりました。

この手術は保険が利きます。しかし、手術を受けた患者はまだ少なく、長期的な成績も不明で、弁の耐久性の確認などの課題があります。

尾崎さんは「妊娠の予定がある女性はワーファリンを服用すると出産時に止血が難しくなるので、弁形成術が有効です」と話しています。


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